二重人格者的レンズ

ニコン・D810+AF-S NIKKOR 300mmF4E PF ED VR

 レンズ名にある「PF」とはPhase Fresnel=位相フレネルレンズのこと。キヤノンでは積層型回折光学素子「DO」レンズとよんでいる。回折レンズともいう。交換レンズに初めて採用したのはキヤノン。それに続いたのがニコンというわけ。もちろん、キヤノン、ニコン以外のメーカーも研究開発はすすめていて、近々、キヤノン、ニコンに続くメーカーが出てくる可能性は大いにある。

 レンズ表面に同心円状に細い溝を彫り込んだ特殊樹脂材(材料と製法は極秘)をガラスレンズに貼り付けて仕上げる。この溝で発生する回折現象を利用して色収差を大幅に、かつ正確に補正できる。さらにレンズを従来よりも小型化軽量化できて、とくに望遠系レンズには効果覿面。球面収差を補正できる利点もあるので、将来、望遠系レンズ以外にも利用されるかもしれない。
 まだまだ、あれこれの「欠点」はあるものの、いま、もっとも注目されているレンズの新素材だ。この先の改良と進化、そして応用がひじょうに愉しみ。




 「欠点」は作るのが大変に難しいことがひとつ。もう1つは、回折レンズ特有のフレアが出ること。とくにフレアの発生が、いま最大の欠点と言えるかもしれない。
 フレアは逆光シーンで発生する。周囲が暗いシーンで、画面内に強い光源を写し込むと、その光源周囲に太いリング状の色つきフレアが発生する。これをニコンでは「PFフレア」と命名している(キヤノンは「回折フレア」とよんでいる)。

 強い点光源を画面内に写し込んだ時に起こるフレア以外にも、ごく一般的な逆光撮影でも画面全体に、まるで霞がかかったようなフレアが出ることがある。キヤノンのDOレンズにも当初はそうした傾向があったが、キヤノンの場合は改良を重ねて逆光フレアを(完全とは言えないものの)目立たなくしてきている。
 ニコンはこの300mmF4が初めての回折レンズなので、フレア対策がまだ"未熟"なところもなくもない。
 実際、逆光で撮ってみて「うっ」と唸るような ━━ 最近の優秀なレンズではお目にかかる機会がめっきり少なくなったような ━━ そんなフレアを何度か経験した。

 フレアは困る。コントラストを低下させるし、シャドー部のシマリを悪くするし、ヌケも悪くなる。この300mmF4の標準フードを付けていても出る時がある。回折レンズ部で発生するフレアのようで、レンズフードうんぬんではないのかもしれない。
 ただし、この300mmF4は逆光では、ときどき"だらしない"ほどの描写をすることがあるのだが、順光で写せば、打って変わって素晴らしい描写力を見せつけてくれる。コントラストも充分、カリッとして解像力も高い、ヌケもいい。
 でも、逆光になると…。まるで「二重人格者」のようなレンズだよなあ。