光学性能最優先主義のレンズ

富士フイルム・X-T10+XF16mmF1.4 R WR

 XF16mmF1.4レンズは、いま新型のX-T10で撮影をしてるのだが、そのX-T10の話はまた今度ということで、とりあえずXF16mmについて。

 XFシリーズの中では高価格なレンズだが、それだけはあって、ほんと良く写るレンズだ。フレアも少なく、だからヌケがいい。ぼけ味も柔らかく自然で図々しさがない。
 11群13枚のレンズ構成で、特殊レンズとして非球面レンズが2枚、おもに倍率色収差を補正するためにEDレンズを2枚使っている。その13枚のレンズの中で、6枚固定ユニットと1枚の2つの"フォーカス群"を動かしてピント合わせをしている。近距離時に発生する収差補正のためのフローティングフォーカス方式である。
 これがレンズ構成の断面イラストで、「フォーカス群1」と「フォーカス群2」がそれにあたる。ここで注目したいのは6枚のレンズを一体固定にして動かす「フォーカス群1」のほうだ ━━ ナンだかだんだんとオタクっぽい話になってしまうけど ━━ 。




 AF測距で動かすレンズ群は小さくて軽いレンズに設計するのが一般的。軽いほどAFスピードを高速にできる。動く、止めるが軽快にスムーズに確実にできる。レンズの光学設計者はそのへんのことはよくわかっているから、多少のムリをしてでもピント合わせのためのレンズ群は軽く小さくしてAFスピードを優先させる。
 しかしそうすると、理想とする光学性能を発揮させることが大変に難しくなってくる。描写性能が、少なからず犠牲になることもある。

 富士フイルムの光学設計者は、XシリーズのカメラとXFレンズがスタートしたときから、AFスピードは"二の次"にして光学性能最優先主義を貫き通した。
 初期のXFレンズ、たとえばXF35mmF1.4などはAFレンズとしては「オキテ破り」とも言える全群繰り出し(AF測距のためにレンズ群のすべて、全群を動かす)の方式を採用している。他のXFレンズも、似たような方式(たとえば前群繰り出しなど)を採用して光学性能重視の設計にしている。
 ご存じのようにレンズ全体や多くのレンズ群をイッキに前後させてピント合わせをすれば撮影距離による収差変動がきわめて少なくなる。光学性能的には理想的なピント合わせ方式なのだが、反面、高速AFとは相容れない。富士フイルムはずっとそうしたやり方をしてきた。

 そのため、XFレンズは当初から「AFが遅い、動画撮影に使えない」とたくさんのクレームがきた。それでも、頑固な富士フイルムの光学設計者は多くのレンズ群をまとめて前後させる方式にこだわり続けた。そのほうが光学性能に優れたレンズができるからだ。しかし、いっぽうではAFスピードの不満はつのるばかり。
 そこで苦労をさせられたのが鏡枠(鏡筒)設計者だ。重いレンズ群を高速で前後させるために、さまざまな工夫をした。そのひとつが、強力なAF駆動のためのモーター(アクチュエーター)を使うことだった。パワーのあるアクチュエーターを(ときには複数個)使って重いレンズ群をぐいぐいと動かす。XFレンズの多くはそうした「チカラわざ」で光学性能最優先主義が支えられた来たわけだ。

 その「やり方」がXF16mmにも受け継がれていて、その証拠がレンズ6枚セットのフォーカシングレンズ群なのである。レンズ6枚を固定したままの重いレンズ群をパワーのあるDCモーターで動かす。さらにフローティングフォーカス方式を採用することで撮影距離が変わっても高い描写性能を保持できるようにしている。

 つまりXF16mmF1.4はそのような"こだわりレンズ"なんだということを言いたかったわけだ。