贅沢余裕設計

シグマ・dp0 Quattro

 dp0 Quattroに内蔵の21mm相当画角の14mmF4レンズは8群11枚構成。それにしても、大きく長いレンズである。ズームでもないし、フルサイズ判をカバーするわけでもないのに。ただの(と、いっちゃナンだけど)APS-C判用の広角単焦点のレンズではないか。初めてこのカメラを見た時も ━━ 今年2月のCP+のときだった ━━ なんでこんなに長くて大きい21mm画角のレンズなんだろうかと思ったほど。
 その後、あれこれ話を聞くうちに大きい長い理由がおぼろげながらわかってきた。

 その理由のひとつが「贅沢余裕設計(@シグマ山木)」だというのだ。
 8群11枚のレンズ構成をゆったり余裕を持って設計することで、つまり通常ならサイズにこだわって小さくコンパクトなレンズに仕上げようとするところを、その逆に鏡筒を大きく長くすることで、贅沢なことだけど性能的に余裕のあるレンズを作ることができる。
 コンパクトなレンズにするには、とくに超広角レンズだと高屈折の光学レンズや曲率の高い非球面レンズを使い、ぎしぎしに詰め込むようにしてレンズを構成していかなくてはならない。そうした構成のレンズは製造組み立て時の調整(調芯)が難しく、狙った精度のレンズを作りあげることも難しくなる。時間も手間も、そしてなによりも優れた技術も必要となる。




 しかし、贅沢で余裕のある光学設計をすれば、高屈折の光学レンズなどを使う必要もなく、光をゆっくりと丁寧に屈折させることができる。ゆるやかに光を曲げて集めて焦点を結ばせれば、その結果として歪曲収差やその他の収差の発生を抑えることもできる。レンズそのものは大きくなるが余裕があるから製造時の調芯作業も比較的容易にできるし、製品のばらつきも大変に少なくできる。少し努力すれば設計目標値以上の精度を得ることも不可能ではない。

 そんなふうにして設計、製造されたのがdp0 Quattroの14mmF4レンズで、だから大きくて長いレンズにしたらしい。もともと「サイズ」と「かたち」にこだわらない自由奔放なdpシリーズだ。レンズが少しくらい(じゃないけど)大きくなったって外観が奇妙でも、コアなシグマファンは「dpだからしょうがないよなあ」と文句も言わないだろう(だろう)。…でも、それにしてもdp0はでかくてスタイルもトンがりすぎ、そのカタチからして収納性も悪い、首や肩からぶら下げて歩くと目立ちすぎて恥ずかしい…。

 話を替える。
 交換レンズは組み合わせるカメラボディがまちまちなので、レンズをどれだけ精度良く作ってもカメラとの相性が悪ければ、せっかくの優れたレンズの実力が発揮できないこともある。それに対してカメラボディ固定式のレンズでは、ひとつの個体(カメラ)ごとにレンズとイメージセンサーを調整して最適なカメラ仕上げることができる。レンズを「贅沢」に設計し製造してから、カメラボディに取り付けるときに調整を手間を惜しまず丁寧にやれば、相当に高精度なカメラができあがる。
 かくかくしかじかで、ひょっとするとシグマのdp0 Quattroは「理想的なカメラ」になっている可能性もなくもない(少しヨイショしすぎかな)。