至近距離での優れた描写性能

富士フイルム・X-T1+XF90mmF2 R LM WR



 前回ブログの続きになるが、この90mmF2の最短は60センチ。135mm相当画角のレンズの至近としてはトップクラスではないか。感心したのはその至近距離の短さだけでなく、近距離での描写の良さであった。遠景から中距離、そして至近までピントを合わせる距離で描写性能が変化しない。ぼけ味もそうだが、一定で安定していて、とてもナチュラル。
 そもそも、一般的にいってレンズは無限遠を基準にして、そこでベストの描写をするように設計している。MTF曲線図だって無限遠での(計算上の)データーだ。撮影距離が変われば描写性能も変化する。これまた一般的にだけど、近距離になるほど描写性能は落ちてくる。

 その近距離での描写性能を低下させずに安定した写りにするための方法のひとつが「全体繰り出し」や「前群繰り出し」のピント合わせの方式。
 ただし、この方法はピント合わせの時に重くて大きなレンズ群をカタマリでぐいぐいと前後させなければならず、AF時代になってめっきり少なくなった。小さくて軽いレンズ群をすいすい動かしてピント合わせをするインナーフォーカス(またはリアフォーカス)の方式が採用されるようになって、レンズ性能は、一時、がっくりと低下してしまった。AF対応のために描写性能が犠牲になったわけだ。
 しかし、近年、レンズの光線追跡のシミュレーションソフトなどが飛躍的に良くなったり、優れた光学レンズが開発されるなどして、インナーフォーカス方式でも撮影距離にかかわらず高い描写性能を持つレンズもたくさんでてきている。

 ところで、富士フイルムのXFレンズがスタートしたころ、AFレンズであるにもかかわらず「愚直に」全体繰り出しや前群繰り出しの方式のレンズを出してきた。描写性能を最優先したためだ。ぼくは、凄いチカラわざのレンズだなあ、と感心したおぼえがある。重いレンズ群を強力なモーターでぐいぐい動かそうとしたが、そうそうスピードが出せるわけはない。そのせいで、当初のXFレンズは「AFスピードが遅いっ」とあちこちから叩かれまくった。
 XFレンズは高速AFスピードよりも、あえて描写性能を優先させたのだ。それが富士フイルムのレンズ開発のフィロソフィー。
 ピント合わせの方式をちょっと見ればAFスピードが遅いことはたちどころにわかるはずなのに、AFが遅いっ、と文句を言う。じゃあ聞くが、AFスピードさえ速ければ写りはそこそこでもいいのか、と。

 XF90mmレンズから話がどんどん離れていくが、まあ、いいか。
 無限遠から至近まで安定して優れた描写のレンズにするにはもうひとつ方法がある。フローティング(近距離補正)機構を採用することだ。インナーフォーカスでのピント合わせは、1枚レンズまたは数枚のレンズを貼り合わせて1つの群にしてそれを前後させる。ところがフローティング方式は、2つのレンズ群を撮影距離に応じて、近づけたり離したり複雑な「間合い」を保ちながらピント合わせをする。こうすることで近距離、至近距離で目立ってくる収差の補正を適正におこなって優れた描写性能を保つというものだ。
 うーむ、フローティング方式の話をすれば、あれもこれもと止めどがなくなるので(いつものことだけど)このへんでいったんやめる。

 じつは、XF90mmを使って至近距離で撮影したとき、予想していた以上に描写が良かったため、ぼくはてっきりフローティング方式のレンズだと思い込んだ。ところが、じつはそうではなくて、ごくごく一般的なインナーフォーカス方式だった。ちょっと不思議な感じだった。
 このへんの、XF90mmレンズの「良く写る謎」については、もう少し探ってみようかと思う。