敢えて手ぶれ補正を入れなかったレンズ

富士フイルム・X-T1+XF90mmF2 R LM WR




 90mmF2レンズには手ぶれ補正の機構は備わっていない。手ぶれ補正なしのレンズ。富士フイルムのXシリーズの手ぶれ補正はレンズ内方式。レンズ群の中の一部群を動かしてぶれを補正する方式である。OIS。
 ところがXFレンズの中で単焦点レンズに、そのOISが内蔵されているものは1本もない。すべてOISなし、手ぶれ補正なしである。いっぽうXFズームレンズのほうは、ほぼすべてのズームにOISを内蔵してる(ただ1本、XF16~55mmF2.8のみが非OIS)。

 XF単焦点レンズはすべてがF2.8よりも明るい開放F値である。一般的に言って大口径レンズほど手ぶれ補正の機構を組み込むことが難しくなるといわれている。理由はいくつかあるのだが、ひとつは補正光学系が大きく重くなるので効果的に動かすことが難しいこと。もうひとつは光学性能に影響するところが大きいこと。
 現在の多くの交換レンズはAF対応が必須条件になっている。高速にAFができるように光学設計しなければならない。なおかつ、最近の高画素カメラに対応するために高い描写性能が要求される。こうした難問をクリアしていくために光学設計者は大変な苦労をしている。さらに、それに追加してぶれ補正光学系を組み込んで、描写性能を落とすな、AEスピードをもっと速くしろ、と無理難題を背負いながらレンズの設計がおこなわれている。

 そもそも、レンズ内手ぶれ補正の方式は大きなリスクがある。構成レンズ群の中の一部のレンズ群とはいえ、レンズを構成する光学系を「動かす」わけだ。それもAFレンズ群のように光軸に沿って前後させるのではなく、光軸と垂直方向にずらす。
 わずかでも光軸がずれれば、とうぜん偏心が起こる。むろん、偏心しても影響が少なくなるようにレンズ設計をするのだろうけれど(そこが設計者のウデの見せ所であり苦労の種)、しかし偏心することに違いはなく、ほんのわずかだと言っても、偏心すればレンズ性能を低下させることにもなりかねない。

 「レンズの光学性能を最優先させるために、もし、AFか手ぶれか、どちらかやめていいよ、と言われたらどっちを捨てますか?」と、以前、いくつかのメーカーのレンズ設計者に同じ質問をしたことがある。
 驚いたことに、設計者のほとんどが間髪をいれず即答した。「もちろん、手ぶれ補正をやめたい」、と。うーん、どっちかなあ、なんて考える人は誰一人いなかった。
 「じゃあ、AFも手ぶれもいらない、と言われたら、どう?」とぼくは重ねてある設計者に聞いたら、その答えが実におもしろかった。「AFも手ぶれもいらない、で、いまのレンズ設計技術を持ってして完全MFレンズを作らしてくれれば、そりゃあ、凄いレンズを作ってみせますよ」と。「そのうえ、コストアップはそこそこ許す、少しぐらい重くて大きくてもよいぞ、なんて言われれば、夢のようなレンズができますよ」とも言っていた。

 えーっと、つまり、ぼくがナニを言いたかったかというと、XF90mmに手ぶれ補正(OIS)を組み込まなかったのは、光学性能を最優先にしたからだということなのだ。
 こうしたことは、別段、XF90mmレンズやXF単焦点レンズに限ったことではない。他のメーカーでも、なによりも画質を優先させるレンズには手ぶれ補正を組み込まない、そんなレンズが多くなってきている。カメラが高画素化してきて桁違いの解像描写力が求められるようになってきたからだ。
 ここで誤解されると困るのだが、手ぶれ補正を組み込んでも高い光学性能を充分に保つように、猛烈にがんばって、めちゃくちゃ苦労をしてレンズ設計しているところもあるのだ。手ぶれ補正を組み込んでも、光学性能をそれほど低下させずに設計する方策はなくもない。だから一概に、手ぶれ補正内蔵レンズは性能に期待できない、とは言い切れない。

 なんだか脈絡のない、ばらばらの話になってしまった。すまん。次はもう少し「読みやすい」ブログにしますからね。