ローパスフィルターの小さな利点と大きな欠点

キヤノン・EOS 5DsR+EF24~70mmF2.8L II USM




 なんだか、数年前のニコンのD800/D800Eの"再来"のような気もしないでもないキヤノンの高画素一眼レフカメラである。EOS 5DsRとEOS 5Dsの2機種が同時発売。
 もう、いまさら説明をするまでもないとは思うが、5DsRと5Dsの違いはただ1つ、ローパスフィルターの効果があるかないかだけ。どちらの機種もローパスフィルターは内蔵しているのだが、5DsRのほうはその効果をなくす処理がなされている。そうです、D800(効果あり)/D800E(効果なし)とまったく同じ手法で(詳しい説明は省略)ローパスフィルターの効果をON/OFFしている。
 ローパスフィルターはフルサイズ判センサーに見合ったサイズともなると、カメラ部品としてはとても高価なものになる。そんな高価な部品を使って、まったくの役立たずにしている。5DsRのローパスフィルターは、いっちゃあナンだけど「どぶに捨ててる」のと同じだ。

 なぜ、そんな無駄なことをしているのか、についての話をすれば、めちゃくちゃ長くなるので、またこれも省略をするが、無駄を承知の上で万やむを得ず苦渋の手法、なのだととりあえず考えておいてほしい。とはいえ、実にもったいない話だよなあ…ぶつぶつ…。

 ローパスフィルターの役目はただ、ひとつだけ。モアレ/偽色の発生を目立たなくすことだ(しかし完全になくせるわけではない)。ローパスフィルターを利用して、ほんのわずか解像力を落とす。そうすることでモアレ/偽色の発生を低減させている。これが利点。つまり、その目的のためだけに、せっかくの得られるべき高い解像力を捨ててしまっている。これがローパスフィルターの大きな欠点である(高価な部材であることも)。でも、ローパスフィルターを使わないことには、効果的にモアレ/偽色を目立たなくすることができない。強い副作用があることはわかっていても治療のために使用する「麻薬」のようなものだ(とぼくは考えている)。

 ユーザーの中にはモアレや偽色が出てはゼッタイに困る、という人もいる。逆に、モアレ/偽色は気にしない、なにがなんでも高い解像力の画像が得たい、という人もいる(ぼくはその後者のほうだ)。
 そこでキヤノンは、ローパスフィルター効果ありでモアレ/偽色を抑え込んだ5Dsと、ローパスフィルター効果なしで解像力を確保した5DsRの2モデルを同時に発売したわけだ。これなら誰からもクレームは来ない。3年以上前に発売したニコンのD800/D800Eとまったく同じことを5Ds/5DsRでやっている。でも、D800/D800Eの後継機種として発売されたD810では、ニコンはあっさりとローパスフィルターを取り外した1機種だけにしてしまった。たぶん、ローパスフィルター効果をなくしたD800Eを使ったユーザーから、モアレ/偽色が目立って困るといったような強い反応がなかったのだろう。

 そうした「前例」があったにもかかわらず、キヤノンが敢えて同じ轍を踏んだのには、うーむ、なんというか、いかにもキヤノンらしいことですね。

 ところで、EOS 5DsRかEOS 5Dsかどちらがおすすめかと言えば、ぼくとしてはまったく躊躇することなくEOS 5DsRのほうをとる。カメラ価格も5Dsに比べて少し高くて、役立たずのローパスフィルターを内蔵していることに腹立たしいけれど。
 5060万画素もの高画素センサーを使ってですよ、せっかくの高解像力の写真が得られるというのに、なんで解像力を落としたEOS 5Dsを選ぶのか。ごくごく特殊な被写体を限定的に撮影するのでなければ、たとえモアレ/偽色が出たとしてもそれほど気にすることもないと思う。