「ディテール重視」モードは素晴らしい

キヤノン・EOS 5DsR+シグマ・24mmF1.4 DG HSM Art




 画素数が多くなると画質が良くなる。だから画素数の多いカメラを「高画素カメラ」という。それを多画素カメラなんてキタナイ言葉は使ってはいけない。冗談ダヨ。
 イメージセンサーの高画素化にはメリットとデメリットがある(いちおう)。メリットは解像力と諧調描写力が向上すること。微細な部分まで確実に写せれば豊かなディテール描写が可能になり、結果的に諧調描写力がアップする。
 いっぽうデメリットは ━━ 技術が進化すれば多くは改善されるものばかりだが ━━ 限られたセンサーサイズで受光素子を細分化すれば、素子が受ける絶対光量が少なくなる。高感度化のためには電気的増幅をせねばならず、そこでノイズが目立って画質が悪くなる。もうひとつのデメリットは、現在のカメラの機構上の問題なのだが、ミラーやシャッターの微妙な震動が原因となって"カメラぶれ"が目立つようになること。画素数の多い少ないにかかわらず同じ「量」ぶれたとしても、高画素にして解像力が高まるほどほんのわずかなぶれでも、画質に影響を与えてせっかくの高解像力の画像を低下させてしまう。

 キヤノンはこうした2つのデメリットが「解決」できない限り、高画素化になかなか踏み出せなかったという一面もあったのかもしれない。
 高感度での画質について5Ds/5DsRがおこなった対策のひとつは画像処理の高速化だった。高感度ノイズを低減するには膨大で複雑な処理が必要とされる。最適な処理を時間をかけて丁寧にするほどノイズは低減できるともいわれている。しかし処理に時間をかければレスポンスが悪くなる。それでなくてもワンカットの画像が約5000万画素もあって画像処理に時間がかかる。ではどうすればいいか。
 その解決策として5Ds/5DsRでは、より高速に処理できる高性能な画像処理エンジンを採用した。最新の画像処理エンジン「DIGIC 6」を2つデュアルにして並列処理、ハイスピードで大量の画像データの処理(ノイズ低減処理)をおこなっている。その結果、約5000万画素ものビッグデーターを、ISO6400やISO12800の高感度でも最高5コマ/秒の高速で連続撮影を可能にした。

 もう1つのデメリットであるカメラぶれ低減のために、5Ds/5DsRでは新しいミラー駆動制御方式を採用している。ミラー作動時にいくつかのモーターを使って最適にコントロールすることでミラーのアップやダウン時のショックを低減させる。従来機ではミラーのアップダウンは、おもにバネを使っていたのだがそれをモーター制御することで、ミラーが跳ね上がったり下に収まったりする直前にブレーキをかけてスピード調整し、ミラー衝撃をやわらげるシステムを組み込んだ。
 これはシャッターを切ってみればすぐ実感できる。従来の一眼レフカメラとは、手に伝わってくるショックがぜんぜん違うのだ。じつに軽ろやかで上品でよろしい。キヤノンの一眼レフカメラとは思えないほどいい ━━ キヤノンの一眼レフは音とショックについてじつにアバウトなところがあった、ニコンやペンタックスとは大違い ━━ 。それはともかく、5DsRを初めて手にしてシャッター切ったとき、「うっ」と声が出たほど感動したことだった。

 このほかにも、より高解像力の画像を得るための「工夫」がいっぱいされているのだが、説明していればきりがない。以下、省略。
 ただし1つ、それららの中で、5Ds/EOS 5DsRを使って撮影してみて、ぼくがもっとも感心したのがピクチャースタイルに新しく加えられた「ディテール重視」のモードである。このディテール重視モードは、5Ds/5DsRのためにあると言い切ってもいい素晴らしい撮影モードである。微細な部分(高周波成分)に最適なシャープネスをかけることで(ここがミソである)、見かけ上の解像感をアップさせるというもの。ただし小さな欠点があって、高ISO感度で細かなノイズそのものにもシャープネスがかかってしまいノイズが強調されてしまうことだ。しかしノイズの目立たちにくい低感度であればまったく気にならない。5Ds/5DsRユーザーのいちばんのおすすめの設定モードだと思う。