メーカーの都合、ばかりが目立つカメラような

キヤノン・PowerShot G9 X

 Gシリーズの特長のひとつは、採用しているイメージセンサーが大きいこと。多くのコンパクトデジタルカメラの主流センサーである1/2.3型や1/1.7型の約2倍ほどの大きさのセンサーを使用している。Gシリーズの"トップモデル"であるG1 X Mark2には1.5型、G3 X、G5 X、G7 X、G9 Xはすべて1.0型センサーを採用している。
 もう1つの特長は、すべての機種がズームレンズ内蔵型であること。単焦点レンズ内蔵型はひとつもない。そこが、なんというか、いかにもキヤノンらしい商品企画で、少年のように「夢」を追いかけず「冒険」もしない。「実利」と「確実」を最優先する。合理的なおとなのキヤノン。




 いやそれはともかくとして、コンパクトデジタルカメラにしては大型のイメージセンサーを使って高画質と高感度をウリにしているのがGシリーズ、と言えなくもない。
 皆さんご存じのようにイメージセンサーを大型化すれば、画質については有利だがデメリットとしてレンズもカメラボディも大きく(そして重くも)なる。小型軽量化することが難しくなる。ところが、そうした"常識"を覆して大型センサーを使いながら小型軽量なカメラに仕上げたのが、そう、ようやく本題にたどり着いたが、PowerShot G9 Xだというわけ。

 28mm相当の3倍ズームレンズを内蔵しながら、バッテリー込みで約200グラム、サイズは名刺より少しだけ大きいぐらい。厚みは約3センチ。
 たしかに小さくて軽い。このカメラに1.0型センサーが使用されているなんて、と驚くほど。G9 Xの最大のセールスポイントがこの小型軽量なのだが、しかし、見方を少しイジ悪く変えてみるとG9 Xの魅力はそれだけしかない。小型軽量化を優先させたために犠牲になっているものが多すぎる。

 たとえば、同じ1.0型センサーを内蔵しながらサイズも重さもそれほど違わないソニーのRX100 Mk4と比べてみるといい。価格はソニーのほうが2倍ほど高いが、そのRX100 Mk2には今のコンパクトカメラ、とくに高級高性能を謳うカメラには"ぜひ必要"と思われる機能や機構がキチンと盛り込まれている。しかしG9 Xには(価格が半分とはいえ)、そのうちの1つぐらいはぜひ欲しい機能や機構 ━━ 可動式モニター、内蔵EVF、ハイスピード動画などなど ━━ がない。

 カメラ操作についても、多機能カメラには"必須"とも言える十字キーやダイヤルがない。必要な操作は液晶モニターをタッチしておこなえ、というわけだ。スマホでタッチパネル操作に慣れているとはいえ、カメラとなると少し話が違う(ぼくのような古型の人間にとっては、とくに)。
 頻繁に使用する再生ボタンがボディ背面でなく、キヤノンのカメラでは珍しいカメラ上部にあるというのにも戸惑う(操作性はめちゃくちゃ悪い、と思う)。いっけんキヤノンらしいソツのないカメラに仕上がっているように見えて、じつは「メーカーの都合」ばかりが目立つキヤノンらしくないカメラの感じ。