D700の視野率95% ―― その2

ニコン・D700 + TAMRON 28〜300mmF3.5〜6.3 VC
 撮像センサーのピント面の前には、水平と垂直分離のための2枚のローパスフィルターや赤外カットフィルター、保護ガラスなどが、それぞれは大変に薄いものだけれど数枚重ね合わさっている。これはD700のフルサイズ判撮像センサーに限ったことではない。その撮像センサーがシャッターにぶつかるからといって、“フランジバック不変の原則”があるからして、それを後方にズラすなんてこともできない。
 デジタル一眼レフカメラはこのようにごく狭いスペースしかないシャッターと撮像センサーの間に無理矢理、ブ厚い撮像センサーをねじ込み、さらにイメージセンサークリーニング機構を組み込んだ。

 D700のイメージセンサークリーニング機構は、ローパスフィルターを高周波振動させ付着したゴミやほこりをふるい落とす方式。よってローパスフィルターだけを振動させるためには、いままで撮像面に密着させていたローパスフィルターを“分離”する必要がある。


 ローパスフィルターを撮像センサーから“剥がして”、そこに高周波振動装置をセットすると、それでなくてもぎりぎりのスペースに押し込んでいるのに、これではどんなことをしてもシャッターにぶつかってしまう。シャッターとイメージセンサークリーニング機構と撮像センサーが互いにぶつからないようにするには、シャッターユニットを前面に押し出してスペースを確保するしか方策はない。そうです、D700はそれをやった。
 ところが、シャッターユニットを前に押し出すと、さて、どんな問題が起こってくるでしょうか…。

 シャッターユニットが前に移動すると、今度はミラーが邪魔になってくる。じゃぁぶつからないようにミラーを前に出せば、と考えるかもしれない。しかしそれではフランジバックが変化してしまう。前も後も、文字通りにっちもさっちもいかない。
 じゃあどうするか。ミラーを小さくするしか策はない。でも、ミラーを小さくすると…。

D700の視野率95% ―― その1

ニコン・D700 + AF-S 24〜70mmF2.8G
 D700のファインダー視野率が95%になってしまった大きな理由は、じつはイメージセンサークリーニング機構(つまりゴミ取りシステム)を採用したためなのだ。このへんのことについてはニコンからは正式な説明はない。あくまで、ぼくの想像による解説、であるから、ひょっとすると多少の間違い(勘違い)があるかもしれない。以下、その長い説明。数回、続くかも。

 さて、ご存じのように一眼レフカメラの構造は、ボディマウント部から撮像面まで ―― この距離をフランジバックという ―― の狭い空間にミラーやフォーカルプレーンシャッターなどの複雑で高い精度が要求される機構が入っている。なおかつ、ボディを小型化するために、ミラーもシャッターもぎりぎりに組み込まれている。余分な隙間はほとんどない。とくにぎりぎりなのはシャッターと撮像センサー面までのわずかなスペース。ここが大きなポイント。


 一眼レフカメラは、もとはといえば薄いフィルムを使って、そこに画像を露光するシステムとして開発されたわけで、それがある日突然、デジタルカメラとなってフィルムが撮像センサーに替わった。ミラーやシャッターなどの基本構造もフィルム一眼レフカメラのままを踏襲した。そして、交換レンズを共有化させるという大前提があったためフランジバックもまたそのまま受け継がざるを得ない。

 ところが、フィルム一眼レフからデジタル一眼レフになったときに、シャッターと撮像センサーとの“隙間”が大きなネックとなってきた。フィルム一眼レフでは、シャッターとフィルムまでの“隙間”はフィルム面がシャッターに触れないぎりぎりのスペースを確保してきた。そのぎりぎりのスペースに、こんどはフィルムよりもずーっと厚みのある撮像センサーを組み込んだ。フランジバックは変えられない、さらに、そこに複雑な機構がたくさん入っている、さあどうするか。

 以下つづく…のだけど、視野率の話、どうも長くなりそうですね。なので、そんな説明は興味ない、て人は、ここ数日このブログを見ない方がいいかも。ところで一昨日のタイトルの「ラ・コッレツィオーネ(la collezione)」は、恵比寿にあるイタリアレストランの名前です。おいしくてとても感じの良いお店なのでよくいきます。

ラ・コッレツィオーネ

ニコン・D60 + TAMRON 18〜250mmF3.5〜6.3
 このタムロンのニコンマウント・18〜250mmズームは、レンズ内AF駆動タイプ(A18N II)のほうだ。というのは、2007年春に発売されたモデル(A18N)はボディ内AF駆動方式だったので、それに対応していないD40/40xではAF撮影することができなかった。こちらはその改良版。
 小型(縮長時の全長が約84cm)、軽量(約450g)というコンパクトながら広角側が28mm画角から望遠側は約380mm相当の画角までカバーする超高倍率ズームだ。そのコンパクト超高倍率ズームと、小型軽量のD40系と組み合わせて使いたいといったユーザーも多くあって ―― いうまでもなくキヤノンマウントの18〜250mmは始めっからレンズ内AF駆動タイプだったが ―― 昨年の末のことだが、ニコンマウント用にもレンズ内AFモーターの改良タイプが発売になった。


 さあこれでD40やD40xと組み合わせて使えるぞ、といったとたんに、ニコンから同じくレンズ内AF駆動レンズにのみ対応した新型のD60が発表になって、期せずしてタムロンにとっては対応機種が増えてまさに“棚ボタ”だったですね。

 ところがです、せっかくの小型軽量18〜250mm超高倍率ズームレンズであるのだが、つい先頃、このズームのさらに上をいく18〜270mmズームが同じくタムロンから「開発発表」された。こちらは手ブレ補正機構も内蔵。それについては先日少し述べた。
 18〜250mmズームと18〜270mmズームとスペック表を見比べると、18〜270mmのほうが全長(約15mm)、最大径(約5mm)、重量(約100g)、フィルター径(62mmから72mmφ)などと、わずかに大きくはなっている程度で、手ブレ補正機構を内蔵させて望遠側も伸ばして、よくもそんなにもコンパクトに仕上げている。18〜270mmはたぶん今年中には発売になるだろうから、そのときには、18〜250mmが望遠側で描写が甘くなるという欠点も改善されて、18〜270mmは相当に魅力的なレンズに仕上がっているんではないかと、ぼくとしては相当に期待をしておるわけです。

望遠側は少し甘いが、広角側はとてもシャープ

キヤノン・EOS 40D + TAMRON 28〜300mmF3.5〜6.3 VC
 タムロンの28〜300mm VCレンズの、こちらはキヤノンEOSマウント。基本性能などはニコンFマウントのレンズとまったく同じ(と考えてよい)。35mm判フルサイズをカバーするレンズだが、APS-Cサイズ一眼である40Dと組み合わせれば約45〜480mm相当の画角になる。

 シャッターボタンを半押しするとAFと同時にVCがスタートする。「うぃーん」といった作動音がかすかにする。この音はニコン用よりもキヤノン用のほうが小さく静か。シャッターを切らずにそのままにしていると、数秒後に「こつんっ」と小さな音とショックがあって作動が停止する。同じような手ブレ補正機構の作動中の音はニコンVRレンズでもキヤノンISレンズでもするけれど、タムロンのVCレンズはその動作音と停止音が少し“目立つ”ような印象だ。しかしブレ補正は相当に効く(印象的にはキヤノン用よりもニコン用のほうが効くようだ)。
 ファインダーを覗いているだけでもブレ補正の効果のほどが体感できる。シャッターボタンを半押ししたあと、カメラを小刻みに震わせても、ファインダー内の画面はぴたりと吸い付いたようにほとんど動かない。


 こんどは、さらに大きくカメラを振ってみると、画面はそれにつれて、ゆらりっ、と動くだけですぐに静止する。まるで自分が宇宙遊泳しているような、そんな感じだ。
 このファインダー画面が吸い付いたように静止するメリットは、望遠でも画面が小刻みに揺れないので正確なフレーミングができることだ。反面、デメリットとしては、クルマや船に乗るとすぐに“酔って”しまうような人が、この補正中のゆらりゆらりとしたファインダー画面をじっと見つめていると(たぶん)気分がすぐに悪くなってくる。このへんのことは、レンズ内手ブレ補正の先駆者であるニコンもキヤノンも、ゆらゆらをどうするかいろいろと苦労しているようだ ―― ファインダー画面を“静止”させすぎると「気分悪くなって撮影もできないっ」とクレームを言ってくるユーザーもいるためその対策をしているメーカーもある。
 望遠端で描写が少し甘くなる傾向があるが、それに比べて広角端の描写はとても良い。望遠側で撮るときにシャープネスとコントラストを少しだけ強めに設定するとぐんっと写りが良くなる。

 EOS 40Dはこの8月末で発売されてからほぼ1年目…なのに、ねえ。しゃきしゃきとしていて、すこぶる使い心地の良いカメラだし、これといった不満もないけどなあ…。

丸の内のストレッチド・リムジン

ニコン・D3 + TAMRON 28〜300mmF3.5〜6.3 VC
 タムロンの高倍率ズームといえば、先日、開発発表された手ブレ補正機能を備えた「18〜270mmF3.5〜6.3 VC」はいったいどんな写りなんだろうか、手ブレ補正の効き具合はどれくらいなんだろうか、と興味のあるところだが、まだ発売日も価格も未定で試用できるレンズもまだない。
 というわけで、こちらの28〜300mmズームは35mm判フルサイズ対応の ―― 18〜270mmはAPS-Cサイズ対応レンズ ―― 手ブレ補正内蔵レンズである。タムロンとしては初の光学式手ブレ補正(VC=Vibration Compensation)の機構を内蔵させたレンズで、レンズ内のブレ補正用のレンズユニットが3つの真円超小粒スチールボールで支持される構造になっている。高精度なジャイロセンサーで手ブレを検知すると、同じく3個の電磁コイルがアクチュエーターとなって補正レンズを高速かつ微細に駆動させるというものだ。


 28〜300mmVCレンズの手ブレ補正の効果は、相当に高い。タムロンは「最大でシャッタースピード換算で約4段分以上」と自信満々に言っていたが、それは決していいすぎでもなんでもなくて、実写してみた感じでは「それ以上」のブレ補正効果のあることを体験した ―― 昨年にキヤノン用のレンズを試したときもそうだったがこのニコン用も同じく。
 「素立ち(ヘンな言葉だけど、なにも寄りかからず二本足で立ち二本の腕だけでカメラとレンズをホールドした状態)」でシャッターを切って、焦点距離100mm程度で、なんと「1/2秒」でほとんどブラさずに撮れた。むろん確率として30%ぐらい(3〜4カット撮って1カット)ではあったけれど素立ち撮影で1/2秒で撮れるというのはすごいと思う。いうまでもないが、立木や壁などに少し寄りかかってシャッターを切ればブレ補正確率は飛躍的にアップするし、ウマくホールドすれば、1秒!で写すことも不可能ではない。

 このリンカーンのストレッチド・リムジンは1/2秒などの超スロー手持ちで撮ったもんじゃない。1/60秒ぐらい、焦点距離300mm。手ブレ補正というのはこうしたちょいとしたスナップに威力を発揮してくれるし、撮ってみようかな、といった気持ちにさせてくれる。でも、ニューヨークでもなくリゾート地でもない場所で白昼堂々とこうしたストレッチド・リムジンを見るというのもヘンだよね。