12月30日(月)


溶ける白い花瓶





 24mm広角側で、最短撮影距離に近い約20センチ付近で撮影。
 このカットはF2.8開放絞り値で撮影したが、24mm広角画角でも最短の至近距離ともなれば被写界深度は思っている以上に浅くなります。「広角画角だからピント幅は広い」なんて考えは遠い昔のフィルム時代のこと。鑑賞画像サイズが巨大な高画素デジタルカメラでは通じません。よくよく心して正確にピント合わせをすることですよ、老婆心ながら。

シグマ・SIGMA fp + 24~70mmF2.8 DG DN Art


 前回の続き。
 5本のフルサイズ判ミラーレス用24~70mmF2.8レンズの実販価格を比べてみました。
 すると、シグマだけが "飛び抜けて" 安いのです。

 価格は販売店によってばらつきがあります。以下は大型量販店でのおおざっぱな税込み価格。
  ・ソニーは、約27万8千円
  ・キヤノンは、約30万2千円
  ・ニコンは、約27万6千円
  ・パナソニックは、約30万2千円

 でした。では、
  ・シグマは、約13万2千円
 と、このように、安い。ざっと半額以下で手に入れることができます。


 なぜ、シグマのレンズだけがこんなに安い価格で売ることができるのか。
 正直に言って、ぼくにはさっぱりその理由がわからない。

 「企業努力」なんてことを昔からよく言われていますが、じゃあシグマ以外のメーカーは企業努力をしていないのか、と言えば決してそんなことはありません。
 シグマ以外の上記メーカーは、レンズ性能に徹底的にこだわって高級高性能なレンズに仕上げているために価格が高くなってしまうからか。
 じゃあ、シグマのレンズは「安かろう悪かろう」なのか。描写性能はそこそこに仕上げているのだろうか。うーん、それは考えにくい。使ってみればわかりますが、レンズの写りもデキも素晴らしいです。

 レンズ部品を特別に安く仕入れているからだろうか。これも考えにくい。
 確かにシグマは会津工場でほとんどの部品を自社生産していますが、だからといってあんなに低価格にはできない。主要部品であるレンズ用ガラス硝材を安く仕入れているからかという点については、シグマ製レンズのほとんどがHOYA製ガラスなので特別に安いわけではない。
 シグマレンズは他メーカーのレンズに比べて売れる本数が桁違いに多いから安い価格設定にできるのか、なんてことも考えにくい。

 実際に5本のレンズを同列同時に撮り比べてないので断言はできないけど、それぞれのメーカーが公表しているスペックやMTF曲線を見比べると、シグマのレンズは他の高価格なレンズにまったく遜色ないレベル(あるいは、それ以上の性能)であることはだいたいわかる。


 シグマの24~70mmF2.8レンズをSIGMA fpと組み合わせて使ってみたけど、そのレンズ描写性能(解像力、コントラスト、諧調描写力、収差補正などなど)についてはトップクラスだと思えました。

 F2.8の開放絞り値からズーム全域で素晴らしい写りです。絞ればさらに良くなりますが、違いは微々たるもの。つまり絞っても開放でもほとんど変化しない。解像力は十二分にあり切れ味鋭い描写で画面中央部から周辺部まで均一で破綻なし。
 なんとか"アラ探し"をしようと写した画像を拡大して隅っこを見たり、欠点の出やすい意地悪シーンで撮影したりしましたが、笑ってしまうほど良く写っていました。でも、レンズ価格は安い。

 とくに24mm広角側の描写には驚かされました。文句なしの描写です。70mm望遠側と24mm側の描写を比べると、ほんの少し24mm側のほうが勝っている感じがしましたけれど。
 ズーム全域で同じ高性能描写を確保するのは至難のワザですので、どのメーカーもどちらかを優先する設計をしています。シグマの場合は70mm側よりも24mm広角側にウエイトを置いてレンズ設計したようです。

 そもそも24~70mmF2.8標準ズームのようなポピュラーなレンズは、設計の技術も製造技術も、使用しているレンズ硝材も似たり寄ったりです。はっきりと見てわかるような「性能差」が出しにくい "こなれたレンズ" でもあります。
 そこで、シグマのレンズだけが特別に安い、低価格になっている。ソニーもパナソニックも、きっと困っていると思います。ソニー、パナに限らずどのメーカーも「レンズで儲ける」のが定番商法ですから。

 性能は良い、他メーカーの高価格レンズと比べて決してひけをとらない、なのに安い。
 シグマをヨイショするつもりはまったくありませんが「安くて良く写る」レンズで、どうしてこんなに価格で作ることができるのか、ほんと不思議でした。





2019.12.30 | | Comments(1) | Trackback(0) | -

12月28日(土)


師走の結婚式





 さすがプロの写真家ですね。的確な指示と緊張感をやわらげる話術、さらに、素早く確実でリズミカルに撮影を終えて、皆んなを寒空にムダに待たせない。


シグマ・SIGMA fp + 24~70mmF2.8 DG DN Art

 シグマの24~70mmF2.8 DG DN Artズームレンズは、フルサイズ判のミラーレスカメラ用交換レンズで対応マウントはLマウントとソニー・Eマウントの2種類だけ。キヤノンRFマウントやニコンZマウントは予定もなし。
 シグマとしてはそれらのマウントに対応したいのはやまやまなのでしょうけど、大人の事情や開発リソースなどの複雑なモンダイもあって当分はやらないでしょうね(大人の事情がブレーキになっているようですね、アテにならない推測ですが)。

 24~70mmF2.8ズームレンズはミラーレス/一眼レフを問わず代表的な標準ズームレンズで、儲かるレンズです。各カメラメーカーとも、同じ焦点距離域、同じ開放F値の「24~70mmF2.8」レンズを発売しています。
 フルサイズ判のミラーレスカメラ用として、ソニーもキヤノンもニコンもパナソニックも、そしてシグマも、すべてハンで押したように同じ24~70mmF2.8です。現在5本あります。

 カメラメーカーではありませんがタムロンからは ━━ 言わずもがなですが、シグマはタムロンと同じように他メーカーの交換レンズも作って売っていますが、シグマはキヤノンやニコンと同じ"カメラメーカー"です ━━ そのタムロンには28~75mmF2.8のソニーEマウントがありますが、このズームは24mmからではなく28mmということなので、ここでは"仲間はずれ"にします。
 標準ズームで、広角側が24mmと28mmでは使い勝手の上からは大違いです。一昔前ならいざ知らず、いまの時代28mmからのズーム比2倍半ほどのF2.8標準ズームなんて価値も魅力も半減です。

 さて、5本の24~70mmF2.8レンズですが、大きさも重さもレンズ構成も似たり寄ったりで(それぞれ微妙に違いますがネグレクトしていいでしょう)、強いて違いを挙げるとすれば「最短撮影距離」と「価格」でしょうか。

 最短撮影距離ですが、ソニーは38センチ、ニコンが38センチ、パナソニックは37センチ。すべてズーム全域です。ところがキヤノンとシグマだけがちょっと違います。ズーム焦点距離で最短が変化する。キヤノンは24mmで21センチ、70mmで38センチ、シグマは24mmで18センチ、70mmで38センチ。ちょっとした違いですがこれはイイですね。


 ここで話が(また)横道に逸れます。
 キヤノンの最短ですが、ホームページやレンズカタログのスペック表には「最短撮影距離・21センチ」としか記載されていません。ところが、最大撮影倍率が30mmのとき、と付記がありました。

 うん? これはナンだ。と、あちこち調べましたがさっぱり判らない。

 なにげなくRF24~70mmF2.8ズーム同梱の「使用説明書」の仕様表を見てみると、なんと「0.21m(24mm時)、0.38m(70mm時)」と記載されてるではないか。なーぁんだキヤノン、出し惜しみか?




 ここで最短とは関係ない話、さらに枝道に逸れます。
 この仕様表に「画界」との項目があります。最短でどれくらいの範囲まで拡大して写せるかを示したものですが、この「画界(がかい)」は昔からのキヤノン独自用語です。広辞苑にも大辞林にも載っていません。

 この項目を仕様表に記載しているのはキヤノン以外には(と言ってもキヤノンはレンズ同梱の使用説明書内だけですが)、オリンパスがそうです。オリンパスは「最近接撮影範囲」とわかりやすく表記しています。
 この情報はデジタルカメラでは必須の項目だと思うのですが ━━ 詳しい話はあらためてするとして、最大撮影倍率の数値なんでナンの役にも立たないですからね ━━ 多くのメーカーはこの数値を無視して記載していません。


 枝道からもとの横道に戻ります。
 "最短"撮影距離だから最短のほうだけを記載してもモンダイはないだろうけど、それだけだとズーム位置で最短が変化することがわからない。不親切ですね。キヤノンは(本来は)こうした不誠実な表記をしないメーカーなのに、ヘンだなあ。

 なお、シグマはどのスペック表を見ても「最短撮影距離 18-38cm」と書いてあり、さらに「最大撮影倍率 Wide 1:2.9 - Tele 1:4.5」とあるからズーム位置で最短も撮影倍率も変化するのだとわかる。こちらは親切(というか、とうぜんですけど)。


 話を本道に戻します。
 ズーム焦点距離で最短が変化して(おもに広角側で短くなるが)より近づいて写すことができれば、そりゃあ便利です。キヤノンとシグマの24~70mmは70mm時よりも24mm時のほうが"より大きく"写すことができます。これはナニかとメリットが大きい。

 さて価格の比較ですが、以上のように無駄話と横道、枝道に逸れてしまって長くなったので、続きは次回にしましょう。別の話題もふくめて。

 ふらふらと迷走した長話にお付き合い、ありがとう。






2019.12.28 | | Comments(0) | Trackback(0) | -

12月26日(木)


残念なる名車





 落書きされて惨めな姿になっていますが、マツダ・ロータリー・ルーチェ・クーペです。
 お前は国産車でどれをイチバンに選ぶかと問われたら、なにをさておいてもこのルーチェに手をあげます。名車です。外観のスタイルがいい。カメラやレンズと関係ない話ですが。
 もともとレシプロエンジン搭載のセダン(ベルトーネ時代のジュージアーロのデザイン)をベースにして(たぶん)マツダのデザイナーがクーペにしたててロータリーエンジンを載せたのがこのクルマ(の、はずです、記憶が曖昧・・・)。



リコー・PENTAX K-3 II + HD PENTAX-DA 20~40mmF2.8~4ED Limited DC WR


 DA Limited 20~40mmズームの話をもう少しだけ。

 以下はPENTAXに"偏向"したオタクっぽい話ばかりなので、PENTAX興味ないぞオレは、という人には申し訳ない。

 DA Limitedシリーズ6本の中で、この1本だけがレンズ内にモーター(DCモーター)を内蔵させてそれでダイレクトにAF駆動しています。だからレンズマウントにAFカプラーがない。マウント名でいうところの「KAF3マウント」ですね。

 ところが他のLimited5本は、すべてカメラ内のモーターをAFカプラーを介して ━━ 強引な例えですが、フロントエンジン・リアドライブ(FR)のクルマのドライブシャフトのようなものを使って ━━ 細い金属棒をぐりぐりと回転させレンズを前後させてピント合わせするという、やや古典的AF駆動方式です。






 レンズフードをセットした20~40mm。
 こんなので遮光の役にたつのか、と疑問に思うほどの薄い薄いレンズフード(ねじ込み式)付きで、この上からレンズキャップ(金属製)を被せる。レンズフードを取り外してしまうとレンズキャップができない。ぼくはこんな"ヘの突っ張りにもならないような"フードは使わないので代用品キャップをと探そうにも55mm径なのでPENTAXには55mm径のレンズキャップそのものが存在しない(なんてこった)。だから仕方なくぼくは他社の55mm径レンズキャップで代用しています。



 ここで話がちょっと横道に逸れます。
 DA Limitedレンズの初めての1本は40mmF2.8。2005年に発売されました。つづいて21mmF3.2や70mmF2.4などがつづけて、ほぼ1年ごとに発売され、5本目のレンズが発売されたのが15mmF4で2009年のことです。すべてのレンズはsmcコーティングでした。
 その後しばらくして、2013年にsmc DA Limitedシリーズの5本すべてのレンズに、HDコーティングを施し、さらに円形絞りを採用して「HD DA Limited」として新しいシリーズにモデルチェンジされました。

 ただし、光学系もメカ系も旧来のsmc DA Limitedをそっくりそのまま継承しています。つまりレンズの中身はそっくり前モデルのままなので、HDコーティングされたといってもsmc Limitedレンズの「レンズの味」をほぼそのまま受け継いでいるというわけです(ゴースト/フレアの低減と、ぼけ味が柔らかくなったことに違いはありますが)。



 ここで再び20~40mmズームの話に戻ります。
 新しいHD DA Limitedシリーズが始まったのが2013年で、そうです、その年にHD DA Limited 20~40mmズームレンズが発売されました。

 6本のDA Limitedレンズの中で唯一、防塵防滴構造にもなってますし、レンズ内モーター駆動式AFだし、レンズ設計にも最新技術を取り入れています。
 つまり5本の単焦点Limitedレンズに比べると、この20~40mmズームだけがLimited レンズではありますが"ぐーんっ"とモダンなレンズになっています。このへんが(ぼくには)単焦点Limitedとは感覚的に「ナンとなく違うなあ」と思わせるゆえんです。

 単焦点Limited5本はデザインや描写に"こだわり満開"なのに、20~40mmズームはLimitedらしい"偏屈で唯我独尊的"なところもなく、まるで「素直な青少年」といった雰囲気が感じられます(超個人的感想)。

 現代的なレンズに仕上がっているのだから文句を言うなよ、といわれればそれもそうですが、Limitedレンズといえば、FA LimitedもDA Limitedもそうですが、"やや古くさい=古典的な"操作感があって、そこがイイんだと思ってますから、ピント合わせしても、カメラボディ内のモーターのチカラを"ドライブシャフト"のような金属棒をぐりぐり回転させてレンズ側に伝える、そのときの音と感触が20~40mmズームでは感じられないのが、ちょっと淋しく頼りなく感じるのです(身勝手だなあ)。

 5本の単焦点Limitedレンズとは違うタイプのLimitedレンズだ、とそう思えば20~40mmはそれなりに独特の個性的スタイルを持ったレンズで、そこが魅力でもあるのでしょう。


 もっと古典的でこだわり感がいっぱいの「3本のFA Limited レンズ」については、しばらくしてから、また、おたくっぽい話をしてみようと考えています。
 PENTAX興味ないぞオレは、の人には申し訳ないけど。




2019.12.26 | | Comments(0) | Trackback(0) | -

12月23日(月)


艶めかしく逼る巨大な女性





リコー・PENTAX K-3 II + HD PENTAX-DA 20~40mmF2.8~4ED Limited DC WR


 20~40mmレンズはAPS-C判用(DA)Limitedレンズの中で唯一のズームですが、約30~60mm相当の画角をカバーするズーム比がたった2倍。そのうえ開放F値は20mm側でF2.8、望遠側40mmにするとF4と1絞りぶん変化してしまいます。
 最短撮影距離はズーム全域で28センチはいいとして、レンズ全長が約7センチとちょっと長め。ズーミングとフォーカシングでレンズ全長が伸び縮みするので、レンズ先端部からのワーキングディスタンスは約15センチ前後になる。

 ナンといいましょうか、Limitedレンズらしい個性的魅力に乏しく、平凡な印象のズームレンズです。描写性能などに欠点や不満があるわけではないのですが ━━ むしろ描写に「欠点や不満」のあるほうがLimitedらしくてイイと思うのだけど ━━ レンズスペックもレンズ外観デザインも「平凡≒没個性的」のような感じがします。

 30~60mm相当という標準画角を真正面に据えながらズーム域が狭い、ズーミングすると「1絞り」も変化してしまう、Limitedレンズとしてはサイズが大きい、レンズ外観デザインや操作系に魅力的なギミックがない、などが「平凡≒没個性的」と感じてしまうのかもしれません。
 実際、6本あるDA Limitedレンズの中で、ぼくには、いちばん出番の少ないレンズです。

 ぼけ味はズーム全域でクセがなく、ほぼ良好。総合的な描写性能は40mm望遠側より20mm側のほうが優れている印象です。
 一般的にですが、ズームレンズは広角側も望遠側も同じように優れた描写性能を確保することは難しいといわれています。実際に数多くのズームレンズを使ってみましたが、広角側か望遠側かそのどちらかに描写性能は偏っていました。これは仕方ないことです。
 

 20~40mmズームの20mm側は開放絞り値から優れた描写性能がありますが、数段絞るだけでさらにシャープ感も解像感も向上します。
 40mm側は開放絞り値から描写はやや甘い。絞り込んでも甘さは少し残っています。でも、この描写の甘さは、たとえばポートレートや花などを撮るのには良い効果を出してくれます(好き好きですけど)。なお、近距離の描写に限っては開放絞りから優れています。





 ズーム比がたった2倍しかないこの標準画角ズームレンズの使いこなしのポイントがあります(参考にならんと思いますけど) ━━ このズームを使うときに、ぼくがいつもおこなっている撮影方法、以下の通りです。

 ズーム焦点距離「30mm(45mm相当画角)」の位置をホームポジションとします。画角45mm単焦点レンズを使っているのだと自己暗示して可能な限りズームしない。撮影にあたっては、カメラポジションを前後して大まかなフレーミングします。

 おおよそのフレーミングが決めたら画面全体と周辺部を再確認して、そこでようやくズームリングを動かして修正的フレーミングをする。ズーミングして画角修正する必要がないことのほうが多いのですが。
 そうして撮影を終えたら、ズーム焦点距離をまた30mmのホームポジションに戻す。と、まあ、こんな使い方をしています。





2019.12.23 | | Comments(2) | Trackback(0) | -

12月20日(金)


"理想レンズ"の真逆に向かうシネレンズと写真の将来


 本日は写真撮影用(スチルカメラ用)のレンズではなくシネマ用レンズの話です。
 ぼくは昔、16mmムービーの撮影をやったことがある程度で、いまの動画撮影カメラやレンズについては不如意です。おはずかしいですがそこを承知の上で話をつづけます。

 シグマから興味あるシネレンズが発表されました。「FF Classic Prime Line」レンズで、その"描写"におおいに注目したというわけです。
 14mmから135mmまでの単焦点レンズ10本セット販売のみで、価格は税別で約600万円。



 シグマ製シネレンズのほとんどは、スチルカメラ用(一眼レフ用やミラーレス用)交換レンズをベースにして、それをシネマ用レンズに仕立て直しています。
 そもそも、シネマ撮影用、スチル撮影用を問わずレンズには優れた描写性能が要求されています。とくにデジタルカメラが高画素化するに伴って、いっそう高い描写性能が求められるようになりました。

 収差を可能な限り抑え込み、高い解像力と優れたコントラスト特性を備え、フレア/ゴーストが発生しないこと、発色性能がニュートラルであることなど"理想のレンズ"のために、特殊ガラス硝材や非球面レンズ、さまざまなレンズコーティングが開発され採用されています。

 ところがシグマのFF Classic Prime Lineレンズは、以上のような"理想レンズ"とは真っ向から逆行しているところが特徴です。
 構成レンズ面に施されたレンズコーティングのほとんど取り除くことで、その結果、ゴースト/フレアが出まくりでコントラストはなく、古い古いオールドレンズで撮影したかのようです。

 収差補正や解像力などのレンズ性能の一部については基本レンズそのままですが、レンズコーティングを取り去ることで、たったそれだけのことでゴースト/フレアがこんなにも出てくるのかと驚くほどです。画面全体の均一な描写力や優れた解像力など、"どこかに置き忘れてしまったのか"と思われるような描写です。





 シグマのホームページに、FF Classic Prime Lineレンズで撮影した動画があります。その動画から画面キャプチャしたのが上の写真です。
 色調が強いアンバーに偏っていますが、それは画像処理によるものか撮影レンズそのものの発色傾向なのか不明です。

 コーティングを取り除いたことで光の透過率が大幅に低下して、そのためT値が(シネレンズではF値は使いません)、たとえば従来レンズが「T1.5」だったのが「T2.5」と暗くなっています。マウントはPLマウントのみ。

 最近のシネマ用レンズには、一部のユーザーにこうした特殊レンズの要望が多くあり、シグマ以外にもいくつかのレンズメーカーが似たようなテイストのシネレンズもあるようです。
 シグマの話では、FF Classic Prime Line のようなレンズをスチルカメラ用として出す考えはまったくない、とのことですが、いやいや、将来のスチルカメラのユーザーの趣味趣向がどのように広がっていくかわからず、ひょっとすると…という気もしないでもないです。



 昔のフィルム時代の古いレンズ、クラシックレンズとかオールドレンズというのでしょうか、そんなレンズを最新型のデジタルカメラと組み合わせて撮影を愉しんでいる人も多くいます。
 ゴースト/フレアが出たり収差がいっぱい残っていたり解像力がなくて写りが"悪く"ても、それがレンズの味だ、愉しいのだ、というわけです。

 ぼけ味についても、いまは「良い悪い」の評価は無意味になりつつあります。丸ぼけや柔らかいぼけが「良いぼけ」だとは言い切れなくなってきています。
 固いぼけ、二線ぼけ、リングぼけ、そのほうが「ぼけ」らしくて好きだ、良いのだ、写真らしい、と高く評価する人がたくさん出てきています。事実、雑誌やポスター、新聞などで強烈な二線ぼけや収差出まくりの写真を最近、よく見かけるようになりました。

 写真の描写とはこうあるべきだ、とか、レンズ性能はかくかくしかじかの条件を満たしていないといけない、といった古くからのがんじがらめの評価基準は、これからの写真表現の世界では重要視されなくなっていくかもしれません。
 写真もカメラもレンズも、どんどん多様化していくに違いないと思います。その一例がシグマのFF Classic Prime Lineのようなレンズかもしれません。

 カメラもレンズも、そして写真もとってもイイ時代に向かい、自由な写真表現の方向に進みつつあるような気がして、ぼくは嬉しい限りです。





2019.12.20 | | Comments(3) | Trackback(0) | -

12月17日(火)


オリンパスの新型OM-D E-M5 IIIについて・その6





青空に浮遊する真っ白な巨大球体

 キットレンズの12~150mmを使ってみましたが、やはり安いだけあって「それなり」の写りです。E-M5 IIIとの相性は良いとは言い難い、そんな感じ。ちょっと価格は高くなるが12~200mmがおすすめですね。

オリンパス・OM-D E-M5 Mark III + M.ZUIKO DIGITAL ED14~150mmF4.0~5.6 II



 E-M5 IIIはボディ内手ぶれ補正方式を採用し、マイクロフォーサーズのイメージセンサーを上下、左右、斜め、円弧に動かして手ぶれを補正。
 いまでは多くのメーカーがボディ内手ぶれ補正の方式を採用していますが、オリンパスはコニカミノルタやPENTAXに続いていち早くその方式を導入しています(レンズ交換式カメラではコニカミノルタのα7デジタルが早かった)。

 ぼくはボディ内/レンズ内を問わず手ぶれ補正の機能を高く高く評価していて興味もあり、ごく初期から(ニコンのコンパクトカメラ)あらゆるカメラやレンズを使ってきました。
 現在、各社が出しているボディ内/レンズ内ぶれ補正のカメラやレンズも、新しい機能や機構が搭載されればすぐさま試すようにしています。趣味みたいなもんですかね。

 各機種を試した中で、オリンパスの手ぶれ補正システムがイチバン優れているようです。
 手ぶれ補正の効果を表す指標としてシャッタースピードで換算した「補正段数」をカタログなどに表記しています(CIPAが決めた測定方法で算出した数値)。これがちょっと微妙でして、「CIPA規定」とはいえ、メーカーによっては測定がやや曖昧なところもなくもない ━━ 実写して試してみると、どんなに贔屓目に見ても補正段数に達しないものもある ━━ 。

 しかしオリンパスの手ぶれ補正の効果については、オリンパスが公表しているCIPA準拠の補正段数よりも実写したときのほうが"上"をいっていることが(ぼくの経験では)多かった。
 オリンパスの手ぶれ補正は良く効く、というのがぼくのいつわらざる印象です(おべんちゃらヌキで)。



 E-M5 IIIではその補正ユニットを従来機種から"大幅に"小型軽量化しています。
 モデルチェンジや新型機種のたびに小さな改良をしているだろうけれど、今回の改良は、ぼくは大いに注目しました。

 ぶれ補正ユニットのような複雑で大きなメカ部品の小型軽量化は、とくに小さなカメラボディにとってはメリットは大きい。反面、小さくすることでデメリットも出てくるが、むしろメリットのほうがずっと大きい。
 メリットは小さくなったことで、従来機種のときよりわずかだけど空きスペースが得られることが大きい。そのスペースぶんカメラを小さくもできるし、空きスペースに欲しかった部品を追加することもできます。

 いっぽう、デメリットは補正ユニットの部品の小型化により補正パワーが低下することなどが考えられます。
 ところがE-M5 IIIでは手ぶれ補正ユニットを小型軽量化しても、補正段数は従来機種とほとんど同等またはそれ以上に仕上げている。旧型E-M5 IIと比べて最大「約5段」から最大「約6.5段(12~100mmレンズ使用時)」にアップしている。これには感心です。

 ところが、なぜか、このE-M5 IIIの手ぶれ補正ユニットを「どれくらい」小型軽量にしたのかについて、オリンパスは積極的に語ろうとしない。黙っている。ホームページの製品紹介のどこを探しても見つからなかった(そもそもユニットの小型軽量化についての記載が見当たらない)。

 そこで、メーカーに問い合わせたけど「数値については非公開です」とケンもホロロ。
 しばらくして、ある担当者が「従来製品に比べて面積比でマイナス約15%、重さ比はマイナス約25%」も小さく軽くした、と教えてくれました。



 「コイル・マグネットを大幅に小型化したことによる小型軽量化」を達成したのだが、「コイル・マグネットを小さくするとぶれ補正の特性が悪化するので、それを補う制御アルゴリズムを追加改良したり、製造面で工夫をした」という。

 手ぶれ補正ユニットの小型軽量化では開発担当者は相当がんばったんだろうと思う。

 E-M5 IIIのいい話なのに、オリンパスは積極的にアナウンスしない、広報宣伝もヤル気がまったくない。なにか、"後ろめたい"ことでもあるのかな、おおーいっ、オリンパス。





 写真上は、小型軽量化になる前の手ぶれ補正ユニット(E-M1に使用していたものかも、自分で写したのだけど記憶が曖昧)。
 写真下は、OM-D E-M5 IIIに使っている新型の手ぶれ補正ユニットです。写した角度が違うから見比べるのが難しいですね。
 ま、参考までに。





2019.12.17 | | Comments(1) | Trackback(0) | -

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